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「今は順調」が、10〜20年後の現金不足を招くことがあります

「毎月家賃がしっかり入っているし、管理も任せているから問題ない」
アパートやマンションを所有する地主様やご家族にとって、今の経営が順調であれば安心されるのはごく自然なことです。
しかし、不動産経営におけるお金の懸念には、「今が順調に見えるからこそ、将来の危機に気づきにくい」という盲点が存在します。実際には満室で回っていても、10年・20年と経過した頃に「想像以上に現金が残っていない」「築古化に伴う莫大な修繕費や返済で手元のお金が一気になくなった」という事態に直面するケースは少なくありません。
一見問題なく見えている経営が、なぜ気づかないうちに苦しくなってしまうのでしょうか。
本記事では、築30年を超えた物件が抱える実情や、親世代と子世代の間で生じやすい意識のズレといった「見落とされがちな将来リスク」を整理して解説します。
後半では、多額の修繕費と返済に悩んでいた状況から、適切な資産組み換えによって「借金ゼロと十分な収入維持」を同時に実現した実際の解決事例もご紹介します。
目次
「毎月しっかり家賃が振り込まれているし、建物の管理も管理会社にも任せているから、うちは何も問題ない」
先祖代々の土地を引き継ぎ、アパートやマンションを経営されているオーナー様やそのご家族であれば、今の安定した状況に安心されるのはごく自然なことです。しかし、不動産にまつわるお金の心配事には、恐ろしい盲点があります。それは、「今、目の前の経営が順調に見えるからこそ、将来の危機に気づけず先手が打てない」という点です。
実は、今は満室で回っていても、10年後、20年後に「思った以上に通帳の現金がなくなっている」「毎月の手残りが少なくて、修繕費の工面や銀行返済が苦しい」「何十年もかけて蓄積した現金が、大規模修繕で一気になくなった」といった事態に追い込まれるオーナー様は少なくありません。
一体なぜ、順調だったはずの不動産経営が、気づかないうちに暗転してしまうのでしょうか。今回は、見落とされがちな、10年・20年先を見据えた「お金のリスク」について解説します。
後半では、実際に資産組み換えによって借入返済に苦しむ状況から借金ゼロ・十分な収入維持を実現した地主様の事例もご紹介します。
築30年を過ぎると始まる「出口が見えないジレンマ」
典型的な引き金となるのが、築30年を超えた古い収益物件の存在です。【賃料は下がり、修繕費は増える】
近隣に新しくて綺麗なライバル物件が次々と建つなかで、古い物件の魅力はどうしても落ちていきます。家賃を下げないと次の入居者が決まらない一方で、雨漏りや外壁の防水、配管の劣化や破損、エレベーターの故障といった「1回あたりにかかる修繕費」は、築年数が古くなるほど跳ね上がっていきます。
かつては数十万円から数百万円で済んでいた修繕費が、足場を組むだけで数百万円、トータルで1000万円、2,000万円という突然の巨大な出費に変わることも珍しくありません。このとき、多くのオーナー様が次のような「どちらを選んでも苦しい二択」を迫られることになります。
【道その1】お金をかけず、だましだまし乗り切る
「これ以上古い建物にお金をつぎ込んでも回収できない」と、最低限の補修しかしないパターンです。当然、見た目や設備はさらに古びていくため、空室が生じやすいく、家賃も下げざるを得ない状況に陥りやすくなります。
【道その2】お金をかけて、しっかり直す
建物を維持するために、数千万円をかけて必要十分な修繕をしっかりするパターンです。家賃は守れるかもしれませんが、手元の現金が想像以上に減るため、オーナー様ご自身の生活資金や、将来子に相続する予定だった現金まで大幅に減ってしまいがちです。
ただ、【道その1】であろうと、【道その2】であろうと、いずれにせよ、築50年を過ぎてくると、さらに問題は深刻になりがちです。なぜなら、築50年を超えてくると、賃料はさらに下がり、空室も目立つようになりがちです。にも関わらず、修繕費はそれまで以上にかかったりします。収入が減っているのに、出費が増える。割に合わない状態になりがちです。
【建て替えも簡単ではない】
そこで、新しく建て替えるという選択肢もあります。ただ、建て替えようと思っても、多くの場合、「入居者の立ち退き費用の高騰」や「立ち退き交渉の難航」、「建築費の高騰」という現実にぶつかります。収入が途絶える中で1年、2年・・・と出費だけがかかります。その際、1人でも退去してくれないと解体工事もできないため、さらに時間だけが経過していく場合もあります。
【売ろうとしても売りにくい】
いろいろ考えた結果、「建て替えはできない」「売却しよう」と思っても、これから収入が減る一方にも関わらず、老朽化した建物の修繕費は上がる一方という状態なら、収益物件としての買い手が現れず、最終的に「解体・建て替え前提の建物がある土地」として売りに出さざるを得ない場合があります。その結果、高額な立ち退き料や解体費用相当分を差し引かれ、「親から引き継いだ不動産を売ったのに、手元には1円も現金が残らなかった」という、子ども世代が途方に暮れるシナリオすら現実味を帯びてくるのです。
なぜ、頭で分かっていても「動けない」のか?
ここまで読んでも、『うちはまだ大丈夫』と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実際、多くの地主様が同じように考えておられます。なぜ、こうしたリスクが足元まで迫っていても、多くの現場で対策が後回しにされてしまうのでしょうか。【親世代と子世代の認識の違い】
そこには、不動産を所有する「親世代」と、将来それを引き継ぐ「子世代」の間にある、お金に対する認識のズレがあります。
アパートやマンションの多くは、親世代が名義人であり、すべての決定権を持っています。親世代からすれば、「現に毎月これだけ家賃が入っているし、今の生活費や趣味、旅行の費用もここから出ている。今、わざわざ売る必要なんてない」と考えるのが自然です。何より「親から引き継いだ土地を守るために建てたアパート(もしくはマンション)だから、手放すのは先祖に申し訳ない」という強い想いもあります。
一方で、あと30年、40年と人生が続く子ども世代からすれば、「こんなに古くなった物件を引き継いで、将来の莫大な修繕費や、残ったローンの返済を自分たちが背負わされたら共倒れになってしまう」と、大きな不安を抱えることになり得ます。
一般的な分譲マンションなどでは、将来にかかる修繕費用を新築した直後から毎月積み立てています。修繕費が上がった場合、途中で毎月の修繕積立金を上げる場合もよくあります。そこまでやっていても、いざ大規模修繕をしようとした際に、修繕費が不足する場合があります。一方、一般的な地主が経営するアパートやマンションでは、そのような修繕積立金を毎月積み立てているケースは稀です。ただ、本来プールしておくべきだったお金がしっかり残っていれば、それを大規模修繕費に充当することができるかもしれません。ただ、多くの場合、これから大規模修繕費がかかる、という頃には、銀行返済やら納税やら日常の修繕やら、様々なことに現金を使っていて、あまり現金が残っていない、ということがよくあります。
【将来の現金が見えていない】
実際、「年間1,000万円入ってくる」といった目の前の収入(売上)は見えていても、将来かかる修繕費や、銀行返済や納税額を引いたあと、どれくらいの現金が残っているのか、10年後、20年後に手元にどれくらい現金が残っていないといけないのか、が見えなくなっているケースが非常に多いのです。
そのため、いくら「子世代」が心配しても、親世代は「何の問題もない」と聞く耳を持たないことが多く、結局そのまま問題に手が打たれることなく、放置されがちです。
「持ち続けるか」「手放すか」だけでない、もう一つの選択肢
こうした状況を打破するために大切なのは、売却を急いだり、無理に新しい建物を建てることではありません。ましてや、これまでの親御様の経営を否定することでもありません。多くの場合、ご家族の話し合いが平行線になってしまうのは、選択肢が「今のまま無理して持ち続けるか」、それとも「完全に手放して大切な収入源をゼロにするか」の二択しか見えていないからです。他に方法はないのでしょうか。
実際には、資産や収入を減らすことなく、将来の不安を解消できる「資産の組み換え(今の古い物件を売り、別の安定した物件へ買い替えること)」という第3の道も存在します。
【実際の資産組み換え事例】
築35年が経過し、収入の4割を占める1階店舗の退去リスク、雨漏りが発生し、目の前で2,000万円の修繕費が必要となり悩まれていたあるオーナー様(9億円規模のマンション所有)のケースです。当初、所有者のご両親、ご長女は資金繰りの苦しさから売却を希望していましたが、ご長男様は「売りたくない」「ずっと保有し続けたい」と強く反対されていました。
ただ、収入の4割を占める1階店舗は建築時から賃料が半額になっていましたが(賃料月270万円)、もし退去してしまうと、さらに月50万円以上賃料が下がるリスクがありました。その場合、いよいよ毎月の収支が赤字に転落するという状況でした。
それまでに銀行返済が苦しくなり3回返済リスケジュール(略称:リスケ。借入金の返済が困難になったときに行う返済条件変更)をしていて、今回4回目だったこともあり、「次はもうリスケに応じられません」と最後通告を宣言されていました。さらに、1階店舗賃料が月50万円以上下がったあとに売却するなら、全体の売却価格は1億円以上下がる可能性もありました。
そのような健全でない状況だったため、この物件を一番高く売れるタイミングで売却して借金をすべて完済し、残った資金を使って「無借金で、手間のかからない築浅の優良物件を2つ(将来長男・長女がそれぞれ将来単独名義で相続できる)」に買い替える提案を行いました。
ご長男もその方向性で同意され、売却し、資産を組み換え、無借金の健全な状態にする道を選びました。実際にその一棟収益マンションをオークションにかけた結果、当初9億円の見込みから10億6000万円まで価格が上がり、喜んでいただきました。
このような「親世代も子世代もどちらももっと楽になれる、いい方法があるかもしれない」という具体的な選択肢が目の前にないからこそ、「(必要に迫られるまで)とりあえず今のまま持っておこう」という現状維持の判断になってしまうのです。
もし、別の物件に組み換えることで収入が減りすぎるのであれば、もちろん今のまま持ち続けるのも一つです。大切なのは、「売る・建てる・貸す・持ち続ける」のどれかに最初から決めてしまう前に、まずは全ての選択肢をテーブルの上に並べて比較してみることです。
まずは「現状」と「将来の選択肢」を客観的に並べることから
銀行、建築会社、不動産会社、税理士など、それぞれの相談先からは立場に応じた異なる提案をされるため、聞けば聞くほど全体像が見えなくなってしまいがちです。不動産は、ご家族の歴史そのものです。だからこそ、「土地という形を守ること」だけに縛られて家族の生活が脅かされるのではなく、「どうすれば家族全員の生活と安心を守れるか」という視点で、10年後、20年後のお金回りを見つめ直す必要があります。
心配事は、放っておくほど大きくなります。心配事の多くは、「どうなるかわからない」ことから生まれます。しかし、整理して見える化すると、不思議なほど「打つ手」が見えてくるものです。
現状と将来を整理し、選択肢を比較できるようになるだけで、不安は大きく和らぎます。私たちがお勧めしている「心配事の整理」とは、将来を悲観するためではなく、ご家族が安心して暮らし続けられる未来をつくるための第一歩です。

